紙になる木はなあに

和紙はコウゾ*やミツマタ*をすいて作ったものです。「洋紙百年、和紙千年」と言われるように、和紙は耐久性にも並はずれて優れている。和紙は和風の装飾や、プリンター用紙などで人気が出てきましたが、生産量はそれほど多くはありません。現行貨幣ではミツマタなどの和紙が使われており重要な原材料となっていますが、その比率は公開されていません。1万円札で10%ぐらいだと言われています。洋紙は何からどうやってできるのでしょうか。原料はもちろんパルプなのですが、そのまた原料はやはり木です。しかも木なら何でもOKです。ヨシやワラといった草木類でもできます。つまり、繊維質のものであれば、どんな植物からでも紙が作れるということです。以前は環境問題として資材としての木材利用のための森林伐採が問題になっていましたが、最近では製紙用パルプの材料確保のための森林伐採が大きな問題となっています。

*コウゾ(楮)とは、 クワ科、落葉低木。日本全国、朝鮮半島、中国、台湾の暖帯に分布、山地に野生化するが、ふつう製紙の原料として栽植している。栽培されるコウゾは野生のものより大きく枝も太くカジノキとの雑種といわれる。それに対し野生のコウゾはヒメコウゾと呼んで区別されている。 万葉の時代では衣料として利用されていた、紙としてはずっと後のことである。江戸時代になると、コウゾは茶、クワ、漆と並んで「産業の四本」と呼ばれていた。樹皮の繊維は長く強く絡みやすい。そのため薄くとも強靱で、保存のきく和紙がつくられた。そして生育土地を選ばないため広く楮紙の生産が普及した。楮紙はよくもんで紙子(紙でつくった衣服)や合羽(かっぱ)としたり、障子・ふすま紙、提灯紙、傘紙、うちわ、扇子の紙などさまざまに利用された。とくに江戸時代以後生産量は多くなり、明治以後も手すきの製紙は発展したが、1901年ころが最盛期で全国で紙すき戸数は約7万戸もあったという。しかし昭和40年代には急速に姿を消した。

 

*ミツマタ(三椏)とは、 ジンチョウゲ科、落葉低木。枝は太く、強靭で手では折れない。関東以西、中国・四国地方の山間部に多く栽培されているが、野生化をしているところも多い。原産地はネパール、ブータンで中国を経由して日本に入ってきた。名はその年に伸びた枝が3本ずつに分かれていることによる。 日本の和紙はコウゾが一番早く、次いでガンピ(雁皮)が奈良時代に登場、ミツマタは江戸時代と比較的新しい紙の原料。ガンピは栽培困難だが、ミツマタは栽培しやすいことから普及した。近代になってからは機械漉ができること、繊維が短く弱いが、紙にすると艶がありしなやかで美しく、精巧な印刷にも耐え、すかしが入れ易い、弾力性に富み、耐伸、耐折強度が強い利点をもち、紙幣として大量に利用された。紙幣の他にも証券用紙、金箔の間にはさむ箔合紙、かな用書道用紙、美術工芸紙などに使われている。