保安林はどんな働きをしているの

森林は、美しい景観やきれいな空気の提供してくれ、水源を守り、洪水などの災害を防いだり、海岸では潮害を防ぎ、飛砂の害から家や田畑を守ってくれるなど、いろいろな働きをしています。そこで、国や都道府県では、とくに大切に保護しなければならない森林を、「森林法」という法律に基づいて「保安林」に指定し、森林のいろいろな役割を十分に発揮できるよう、伐採を禁止したり、制限したりして、適切な管理を行っています。平成10年度の林業白書によると、保安林には、国有林410万ヘクタール、民有林459万ヘクタール、合計約869万ヘクタールが指定されており、これはわが国の森林総面積の約35%を占めています。保安林の実際の働きとしては、つぎの16種類が定められています。

①水源涵養(かんよう)保安林②土砂流出防備保安林③土砂崩壊防備保安林 ④飛砂防備保安林⑤防風保安林⑥水害防備保安林 ⑦潮害防備保安林⑧干害防備保安林⑨防霧保安林 ⑩雪崩(なだれ)防止保安林⑪落石防止保安林⑫防火保安林 ⑬魚つき保安林⑭航行目標保安林⑮保健保安林 ⑯風致保安林

以上、一番多いのが水源涵養(かんよう)保安林であり、全体の65-70%ぐらいを占めています。下記に我が国の保安林のうち代表的なものについて紹介します。「防風保安林」や「潮害防備保安林」は、森林が風に対して、ちょうど衝立(ついたて)のような役割をするわけですが、この働きは樹木の高さの20~25倍もの広い地域に及びます。また海岸の近くの保安林の特徴として、そこの道路は必ず曲線を描いています。というのも、真っ直ぐな道を通すと、風の通り道となって、効果がおちてしまうからです。また、「雪崩(なだれ)防止保安林」は、雪崩の原因となる雪庇(せつび)(山の稜線(りょうせん)の風下側に庇(ひさし)のように突き出した雪の吹き溜まり)ができるのを防いだり、いったん滑り出した雪崩の勢いを弱めたり、方向をかえる働きをするものです。このように保安林にはそれぞれ大切な役目があるため、保安林に指定せれると、立木の伐採についての制限、土地の形質の変更などの制限、そして植栽の義務などが課せられます。しかし、とうぜん一方で、これらの代償として①固定資産税等の減税、②分収造林制度、③造林補助金の加算、④立木の損失補償、⑤伐採調整資金の融資、といった優遇措置もとれられます。こうした種々の義務と優遇措置を定めて保安林は維持されています。