森林浴するなら針葉樹林or広葉樹林 ?

森林浴とは、針葉樹の森林に入ってその空気を吸い、また全身に浴びることをいいますが、それが単にさわやかな気分というだけだなく、人間の身体に大変良い効果をもたらすといわれています。森の中いると、実にすがすがしい気分になります。樹木から出る香りの中に、ある種の殺菌作用のあることが、近年明らかになってきており、これらが森林浴ブームの大きな一要因になっています。トーキンという学者は早くからこのことに注目をして、「フィトンチッド効果」を提唱しました。樹木から発散される物質(樹木特有の匂いのもと)には殺菌作用があり、たとえばトドマツやイソツツジはジフテリア菌、百日咳ビールスなど、カシ、サンザシは赤痢菌などをを退治するという効果があります。ユーカリは脳膜炎などの治療*に用いられています。この殺菌効果のある微生物質をフィトンチッドと呼ぶのですが、フィット(phyto)は植物、チッド(cide)は殺すという意味をもっています。現在、世界各国で、循環器系の病気療養に森林を利用しようとしたり、森林療養地などが考えられています。日本でも、昔から転地療養ということが行われていて、高山地の気候は貧血や結核回復者などに、低山地の気候は、バセドウ氏病や気管支病の患者によいとされています。これも、きれいな空気と林間での療養が、偶然にも長期の森林浴になっていたのでしょう。ところで、どの程度の森林にどれくらいのフィトンチッド効果があるのかについてはまだあまり詳しいことはわかっていません。世界最大の針葉樹の森に入ると、時として嫌悪感を催すことがあるそうで、これはフィトンチッド効果が過剰なためだろうと考えられています。最後になりますが、森林浴にはなぜ針葉樹林だけがいいのかというと、答えはいたって簡単で調査が行われたのは針葉樹林についてのみで、広葉樹林の方はまだ調べていないから何とも言えないのです。1985年からはフィトンチッド普及センター*が設立されています。

*フィトンチッド普及センター  東京都渋谷区上原三丁目7番13号 プラザ18
*参考書籍 「植物の不思議な力 フィトンチッド」B.P.トーキン 1980年 講談社