ビルの水瓶

「桶」「樽」といえば、何か伝統的な器としてのイメージが強く、風呂桶・清酒やウイスキーの樽・味噌や醤油の醸造用の樽などを思い浮かべます。ところが、この現代でも木製の樽が時代に合った使い方で、我々の生活を支える重要な品として利用されているのです。例えば、高層ビルの屋上には、その中で仕事をしたり、飲料水を供給するための貯水槽があります。ビル内の飲料水は、まず水道管から一度ビルの地下にある受水槽や屋上にある高置水槽に貯め、そこから各階へ供給されるわけです。その貯水槽として木製受水槽が利用されています。木製受水槽の形は円筒形、楕円形または箱型のものなどがあり、大きさは容量数10トンから100トンを超える大規模なものまであります。ふだん目につかない所に設置されているので気付きませんが、大都会の高層ビルの中や屋上には、数百という数の木製受水槽が飲料水用水槽として使われています。FRP製、鋼製、ステンレス製などの水槽も利用されていますが、それらと同様にあるいはそれら以上に、かなりの数の木製受水槽がビル用水槽として利用されているのは、次のような木材の特徴があるからです。①耐水性、耐酸性、耐アルカリ性が強く、耐食性に富み、 耐用年数も半永久的であること、②構造が堅固で地震に強いこと、③現場組立を主としているので狭い場所での組立が容易で、部材も 小さく狭い場所からの搬入も容易にできること、④木材の比重は0・5~0・6と軽く、総重量が軽くなるので設置 するための上げ下ろしが容易で経費が安くすむこと、⑤熱伝導率が鉄の1/400と低く断熱性に富むので水温の著しい変化 や結露の心配がないこと、⑥規模が大きいほど他の材料でつくられた 水槽より安価となることなどです。

東京では帝国ホテル、 丸の内サピアタワー、羽田空港第二ターミナルなどに設置されており、羽田空港第二ターミナルでは、 直径10m高さ5mで国内最大級の木製受水槽 で空港見学者コースに入っています。関西では関西空港などに設置されています。また、ニューヨーク市ではビルの木製受水槽は1万基以上設置されていて、年間400基近くが新しいものに置き換わっています。