木材の使い方

その1

木材の重量あたり強度は、鉄やコンクリートよりも大きいので、太平洋戦争中アメリカは新造大型航空母艦の甲板を木で造りました。 航空母艦を鉄で造るとどうしても上部が重くなるので、軽くて強い木材を使い、船の重心が上部にならず船を安定させることができるからです。そして日本の航空母艦よりも多くの航空機を積むことが出来ました。また、攻撃されたら、木材はすぐに応急処置ができると言うメリットもありました。鉄資源の不足していた日本が造船に苦労したのに対し、豊富な鉄資源を持っていたアメリカが木材で甲板を造っていたと言うのは皮肉なものです。

その2

一口に容器と言っても、現代ではプラスチック、アルミなどいろいろな素材のものがあります。木材で容器を造れるようになったのは江戸時代になってからです。それまでは、焼き物・土器の類いに液体等を入れていました。これでは当然多くの量を入れることは出来ず、長距離の輸送には破損してしまいます。江戸の町に多くの人が住めるようになったのは、軽くて丈夫な杉の樽が開発され、醤油、漬け物、酒、食料が大消費地江戸に運搬できるようになったからです。しかもこれだけではなく、江戸の人々の排泄物は下肥として近郊農家が高く買い取りましたが、杉の樽のおかげ運搬はスムーズにできました。その当時ロンドンやパリなどの都市では、排泄物は窓から道路に放り投げていましたので、衛生状態が悪く伝染病が蔓延していました。しかし、江戸の町は杉樽の肥桶のおかげで世界で最も衛生状態の良い都市でした。

その3

第二次世界大戦中世界最高速度の爆撃機はイギリスの全木製*のモスキートという双発の飛行機でした。偵察機や夜間戦闘機にも使われました。そんなに木製が性能が良いなら全ての飛行機をなぜ木で作らなかったのかと言うことになりますが、理由は重量あたりの強度はやはりジェラルミンの方が木よりも強いからです。それではなぜこの名機といわれたモスキートは木で作ったのかと言うことになりますが・・・設計した会社としても、戦争ですから、材料が足りないとか、専属工場のオーバーフローを予想して、木製なら簡単にできるのでまともな工場でなくても木工所の職人(非戦略工場の職人)でも作れるという作り易さをねらったものでした。採用したイギリス空軍も「本当に性能がよいのか」と言う気持ちでしたが、これが試験飛行をすると、すさまじい性能で、ドイツの戦闘機は追いつけない程のスピードを出しますし、成層圏の高速飛行から地上すれすれのピンポイント爆撃まで出来るますし、大活躍のおかげで映画にまでなりました。予想しなかった長所としては高空でもすきま風がないとパイロットには喜ばれたそうですが、あまり良いことずくめばかりでもなく、熱帯に派遣されたモスキートは「湿気で腐りだした」と言う問題が発生したのも事実です。

木製飛行機
* 全木製とは、 機体、翼、プロペラなどの構造が木製のものを航空機関係者では全木製と呼んでいます。エンジンなどは当然金属です。日本では木製の飛行機はいくつか製造されましたが、有名になつたものはありません。ヨーロッパでは数多くの戦闘機に木製があり、特にソ連では大量に生産され、名機もあります。第二次対戦ではジェットやロケット推進の機体にも木材や合板は利用されいます。