芯持ち材とは

芯持ちは良いと一般の人たちは思っているようですが、これには真実と嘘が入混じっています。まず、現在ナラやブナのように戦前は見向きもされなかった樹木においては、原生林がありますが、木材は植林によるものがほとんどです。植林ということは木が大径木になる前に伐採するため、概ね1本の木から1本の柱しか取れません。芯をはずした木と言うのは狂いも少く良いのですが、価格は内地桧であれば非常に高いものになってしまいます。また同じ材であれば芯持ちよりも芯去りの方が強度があると言われています。これは幼木時の心材には未成熟材があるため、一般的には芯去り材よりも弱いとされています。

しかし、芯持ちの良いところは木を断面から見れば分かりますが、芯に近い方が赤くなっていて周辺部が白くなっています。木が腐りにくいのは、この芯に近い赤みの部分です。周辺部の白いところ(辺材)はすぐに腐ってしまいます。辺材は養分が多く、微生物にはかっこうの場所のため、白蟻などは非常に好んで食べます。そう言う意味で言うと芯持ち材の方が芯の赤身の部分が多く腐りにくい部分が多いとは言えます。法隆寺の修復、宮大工としての技術を後生に伝え最後の宮大工と言われた西岡常一氏の書籍「法隆寺を支えた木」*で桧のことを絶賛し「百年たった木で家を建てれば百年持つ」と書いたばっかりに多くの方が誤解していますが、これは言葉どうりの意味では誤りです。真実なのはそれだけ成長した木は心材の部分が大きく赤身の部分ばかりで柱が取れるとしたら、これは非常に耐久性のある柱と言えるということです。

*法隆寺を支えた木   NHKブックス 西岡常一(著)小原二郎(著)?

文化功労者、宮大工棟梁の西岡氏と木材工学、インテリアの第一人者小原先生の合作本である。西岡氏の宮大工棟梁の経験と木への思いを小原先生が聞きまとめ、小原先生が実証データを元に丁寧に説明補足している。この本の出版は1978年(昭和53年)西岡氏68歳頃のものであるが、今だに人気のある書籍で、また西岡氏のその後の著作の端緒のものである。