木の知識
■自然はどんな手順で森林をつくるの
森林ができるまでの過程を、水の条件(湿潤の程度)の差から見ることができます。初めは、木がきわめて少なく、気候的にも昼夜の温度差が40度もあり、年間降水量がわずか200mm強という砂漠地帯です。大変乾燥していますので、植物の種類も少なく、厚い葉や茎に水分を貯めておくことのできるサボテン・アロエ・リュウゼツラン等しか生育出来ません。マツバギクのように乾燥期には休眠するもの、また、根が深く伸びて地下水の水面にまで伸びるものもあるといわれますが、いずれにしても、限られた種類の植物の草木(草)類しか育たず、大木は生育しない地帯といえます。次は、もう少し水の条件が良い場所では、単子植物のイネ科の草を中心とする草類が生育します。年間降水量が砂漠の約3倍の720mm程度で、主に大陸地方に見られる丈2m以上の草があるモンゴルの大草原やアルゼンチン東部のパンパスなどがそうです。ここではまた、目立った樹木の発生は見られません。さらに湿潤になると、赤道からやや離れた熱帯地方の草原またはサバンナと呼ばれる地域になります。草原の中に点々と灌木林が見え、川沿いには多少の森林が生育しています。年平均温度は27度で、樹木出現地帯です。そして年平均降水量が1000mm以上の地域となると、樹木の種類も増え、群生して俗に“森林”と呼ばれるようになります。ちなみに、日本は年平均降水量1800mm、年平均気温は6℃〜21℃の間があり、樹木の生育にたいへん適しています。このように、植物発生分布の範囲は、各地の水と気温とに大きく左右されますが、それら一連の影響を「湿性遷移系列」といいます。これとは別に、たとえば火山の爆発のどでできる岩石裸地が、自然の浸食作用など、長い年月を経てごくわずかな湿気と水分でそこにコケ類が発生し、やがて草原となり、灌木がふえ、高木材が出現、そして森林が出来上がるという、これを「乾性遷移系列」といいます。