山の木には水資源を守る働きがあります。だから山の木を伐りすぎると洪水を招くこともあります。山の森林の土壌は柔らかく、水分を保持しやすくなっています。よく整備された森林の土壌なら、1時間に100〜150mmの降水を貯留することができます。このため、豪雨や雪どけなど、一時的に水量の増えるときには、その水をいったん吸い込んで貯え、今度は徐々に流出させますから、河川の洪水を防ぐことができます。逆に、小雨時にも、徐々に流れ出るみずによって河川は枯れず、ほぼ一定の流量を保つことができます。森林(土壌)のこうした働きを、「水源涵養(かんよう)機能」といいます。森林に降った雨は、その25%が蒸発し、樹木が吸収するのが15%、残りの60%は流れ出て行くわけですが、半分以上の35%がいったん森林の土壌中にとどまり、徐々に地下水として、また河川の水となって流れていきます。ところが、これが裸地の山の場合、森林土壌に吸収されたり、木の葉や枝による蒸発効果はほとんどないので、半分以上が降雨直後にそのまま流出します。したがって、大雨のときには洪水や鉄砲水といった災害に結びつきやすいというわけです。一方、雨のないときでは、徐々に流出する水分がわずか5%なので、これまた渇水(かっすい)という事態を呼び起こしてしまいます。日本は、世界でも有数の多雨国であるうえに、地形からしても、細長い国土に高い山が多く、自然河川は短く急ですので、洪水の危険性が常にあります。その反面、人口が多いため一人当たり降水量は少なく、すぐに水不足になりやすいというジレンマに悩まされています。このほか、森林土壌には天然の濾過(ろか)装置として水質をきれいにする働きがあります。つまり、山の木と水はとても大切な関係にあります。 |