木の知識
■森林浴するなら針葉樹林、広葉樹林のどっち
森林浴とは、針葉樹の森林に入ってその空気を吸い、また全身に浴びることをいいますが、それが単にさわやかな気分というだけだなく、人間の身体に大変良いというのです。森の中いると、実にすがすがしい気分になり、空気もなぜかおいしく感じたりします。木の光合成によって出される新鮮な酸素がいっぱいあるとか、大気中の汚染物質を樹木がエア・フィルターのように吸着してくれるからでしょうか。森の外気温に比べて最高気温は低く、最低気温は高いことで夏涼しく、冬暖かいということもあります。あと湿度も少し高く、しっとりとした感じがします。快適で心身ともにさわやかな気持ちになるのでしょう。樹木から出る香りの中に、ある種の殺菌作用のあることが、近年明らかになってきており、これらが森林浴ブームの大きな一要因になっていることは言うまでもありません。トーキンという学者は早くからこのことに注目をして、「フィトンチッド効果」を提唱しました。樹木から発散される物質(樹木特有の匂いのもと)には殺菌作用があり、たとえばマツやスギはジフテリア菌を、モミは、百日咳ビールスなどを、カシはコレラ菌などを、ユーカリは流感ビールスを退治するという効果があります。この殺菌効果のある微生物質をフィトンチッドと呼ぶのですが、フィット(phyto)は植物、チッド(cide)は殺すという意味をもっています。現在、世界各国で、循環器系の病気療養に森林を利用しようとしたり、森林療養地などが考えられています。日本でも、昔から転地療養ということが行われていて、高山地の気候は貧血や結核回復者などに、低山地の気候は、バセドウ氏病や気管支病の患者によいとされています。これも、きれいな空気と林間での療養が、偶然にも長期の森林浴になっていたのでしょう。ところで、どの程度の森林にどれくらいのフィトンチッド効果があるのかについてはまだあまり詳しいことはわかっていません。世界最大の針葉樹の森にはいると、時として嫌悪感を催すことがあるそうで、これはフィトンチッド効果が過剰なためだろうと考えられています。最後になりますが、森林浴にはなぜ針葉樹林だけがいいのかというと、答えはいたって簡単で調査が行われたのは針葉樹林についてのみで、広葉樹林の方はまだ調べていないから何とも言えないのです。