丸太組構法を用いた建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する
安全上必要な技術的基準を定める件
第一 適用の範囲
一 地階を除く階数は二以下としなければならない。
二 地階を除く階数が二の建築物は、一階部分の構造耐力上主要な部分を丸太組構法を用い
たものとし、二階部分の構造耐力上主要な部分を木造(建築基準法施行令(以下「令」
という。)第四十六条第二項による場合、丸太組構法及び平成十三年国土交通省告示第
千五百四十号に規定する枠組壁工法(以下単に「枠組壁工法」という。)を除く。以下
のこの号において同じ。)としたもの又は丸太組構法若しくは枠組壁工法を用いたもの
のいずれかとし、他の構造を併用してはならない。ただし、建築物の一階部分から二階
部分までの外壁を連続した丸太組構法を用いたものとした場合においては、二階部分は、
丸太組構法を用いたものと木造としたもの又は枠組壁工法を用いたものとを併用するこ
とができる。
三 第一号の規定にかかわらず、一階部分の構造耐力上主要な部分を鉄筋コンクリート造
(二以上の部材を組み合わせたもので、部材相互を緊結したものを含む。)又は鉄骨造
(平成十三年国土交通省告示第千六百五十一号に規定する薄板軽量形鋼造を除く。)
(以下「鉄筋コンクリート造等」という。)とし、二階以上の部分の構造耐力上主要な
部分を丸太組構法を用いたものとした建築物(以下「鉄筋コンクリート造等併用建築物」
という。)とし、最上階部分に耐力壁を設けず当該部分を小屋裏とした場合においては 、
地階を除く階数を三以下とすることができる。
この場合において、第三中「基礎」とあるのは「一階部分の構造耐力上主要な部分又は
二階部分の床版と、第三第一号及び第四第二号中「一階部分」とあるのは「二階部分」
と、第四第二号中「小屋裏利用二階建て建築物」とあるのは「鉄筋コンクリート造等併
用建築物」と、第四第四号中「地階を除く階数が一の建築物又は小屋裏利用二階建て建
築物の耐力壁の高さは土等の上端から耐力壁と屋根版が接する部分のうち最も高い部分
における耐力壁の上端までとし、地階を除く階数が二の建築物(小屋裏利用二階建ての
建築物を除く。以下この号において同じ。)の一階部分の耐力壁の高さは土台等の上端
から二階部分の床版の上面までとし、二階部分の耐力壁の高さは二階部分の床版の上面
から耐力壁と屋根版が接する部分のうち最も高い部分における耐力壁の上端までとする。」
とあるのは「鉄筋コンクリート造等併用建築物の耐力壁の高さは土台等の上端から耐力
壁と屋根版が接する部分のうち最も高い部分における耐力壁の上端までとする。」と読
み替えるものとし、第二第三号、第四第三号及び第十一号並びに第五の規定は適用しない。
2次に掲げる建築物は、令第八十二条第一号から第三号までに定める構造計算(以下「許
容応力度計算」という。)により構造耐力上安全であることを確かめなければならない。
一 延べ面積が三百平方メートルを超える建築物
二 高さが八・五メートルを超える建築物
三 地階を除く階数が二以上の建築物(二階部分に耐力壁を設けず当該部分を小屋裏と
した建築物(以下「小屋裏利用二階建て建築物」という。)
第二 材料
一 構造耐力上主要な部分に使用する丸太材等の樹種は、枠組壁工法構造用製材の日本農林
規格(昭和四十九年農林水産省告示第六百号)別表2の樹種又は構造用集成材の日本農
林規格(平成八年農林水産省告示第百十一号)別記3(7)イ表の樹種としなければな
らない。
二 構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質は、腐れ、著しい曲がり等による耐力上の
欠点がないものでなければならない。
三 二階部分に丸太組構法を用いた建築物の構造耐力上主要な部分に使用する丸太材等の含
水率は、二〇パーセント以下とし
なければならない。ただし、小屋裏利用二階建て建築
物にあっては、この限りでない。
第三 土台等
一 一階部分の耐力壁の下部には、基礎に存在応力を伝えることのできる形状とした丸太材
等又は土台(以下「土台等」という。)を設けなければならない。
二 土台等は、次に定めるところにより、径十三ミリメートル以上のアンカーボルト又はこ
れと同等以上の引張耐力を有するアンカーボルトで、基礎に緊結しなければならない。
ただし、次に定める接合と同等以上に存在応力を伝えることができるものとした場合に
おいては、この限りでない。
イ アンカーボルトの基礎に定着される部分の長さがその径の二十五倍以上であること。
ロ アンカーボルトは、土台等の両端部及び継手の部分に配置すること。
ハ ロに定める部分のほか、土台等の長さが2メートルを超える場合においては、アン
カーボルトの間隔を二メートル以下として土台等の部分に配置すること。
第四 耐力壁等
一 耐力壁は、建築物に作用する水平力及び鉛直力に対して安全であるように、釣合い良く
配置しなければならない。
二 小屋裏利用二階建て建築物においては、一階部分の構造耐力上主要な部分が当該建築物
の小屋裏の荷重を直接負担する構造としなければならない。
三 耐力壁を構成する丸太材等は、これらに接する部材に円滑に存在応力を伝えることので
きる形状とするほか、次に定めるところによらなければならない。
イ 二階部分に丸太組構法を用いた建築物(小屋裏利用二階建て建築物を除く。)の丸
太材等の断面積(壁相互の交さ部、耐力壁の最下部等で欠き取ることが必要とされ
る部分を除く。以下同じ。)は、百五十平方センチメートル以上で、かつ、丸太材
等の相互の上下に接する部分の幅は、九センチメートル以上としなければならない。
ただし、丸太材等相互の接触の実況その他の当該耐力壁の実況に応じた許容応力度
計算若しくは加力実験により、構造耐力上の支障となるめり込み及び耐力壁の座屈
を生じないことが確かめられた場合にあっては、丸太材等の断面積を百二十平方セ
ンチメートル以上で、かつ、丸太材等相互の上下に接する部分の幅を七センチメート
ル以上とすることができる。
ロ イに掲げる建築物以外の建築物の丸太材等の断面積は、百五平方センチメートル以
上千四百平方センチメートル以下としなければならない。ただし、許容応力度計算に
よって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
四 耐力壁の高さ(地階を除く階数が一の建築物又は小屋裏利用二階建て建築物の耐力壁の
高さは土台等の上端から耐力壁と屋根版が接する部分のうち最も高い部分における耐力
壁の上端までとし、地階を除く階数が二の建築物(小屋裏利用二階建ての建築物を除く。
以下この号において同じ。)の一階部分の耐力壁の高さは土台等の上端から二階部分の
床版の上面までとし、二階部分の耐力壁の高さは二階部分の床版の上面から耐力壁と屋
根版が接する部分のうち最も高い部分における耐力壁の上端までとする。)
は四メートル以下とし、かつ、幅は当該耐力壁の高さに0・三を乗じて得た数値以上と
しなければならない。この場合において、地階を除く階数が二の建築物で一階部分と二
階部分の耐力壁に丸太組構法を用いる場合にあっては、一階部分と二階部分の耐力壁の
高さの和は、六メートル以下としなければならない。
五 各階の耐力壁線相互の距離は六メートル以下とし、かつ、耐力壁線により囲まれた部分
の水平投影面積は三十平方メートル以下としなければならない。ただし、許容応力度計
算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
この場合において、各階の耐力壁線相互の距離が十メートルを超える場合又は耐力壁線
より囲まれた部分の水平投影面積が六十平方メートルを超える場合にあっては、令第八
十二条の三第二号に定める構造計算を行い、当該階につき、張り間方向及びけた行方向
の偏心率が0・一五以下であることを確認しなければならない。
六 耐力壁線相互の交さ部においては、張り間方向及びけた行方向に耐力壁を設け、かつ、
丸太材等を構造耐力上有効に組み、壁面から端部を二十センチメートル以上突出させな
ければならない。ただし、当該交さ部に対して構造耐力上有効な補強を行った場合にお
いては、壁面からの丸太材等の突出を二十センチメートル以下とすることができる。
七 外壁の耐力壁相互の交さ部においては、耐力壁最上部から土台等まで貫く直径十三ミリ
メートル以上の通しボルトを設けなければならない。ただし、許容応力度計算によって
構造耐力上安全であることが確かめられた場合においてはこの限りでない。
八 耐力壁線に設ける開口部の上部には、丸太材等により構成される壁を構造耐力上有効に
設けなければならない。ただし、これと同等以上の構造耐力上有効な補強を行った場合
においては、この限りでない。
九 耐力壁の端部及び開口部周囲は、通しボルト等により構造耐力上有効に補強しなければ
ならない。
十 丸太材等には、継手を設けてはならない。ただし、構造耐力上有効な補強を行った場合
においては、この限りでない。
十一 二階部分の耐力壁線の直下には、一階部分の耐力壁線を設けなければならない。
十二 耐力壁内には、次に定めるところにより、構造耐力上有効にだぼを設けなければならな
い。ただし、許容応力度計算によって構造耐力上安全であることが確かめられ、かつ、
ホに定めるところによる場合は、この限りでない。
イ だぼの材料は、日本工業規格(以下「JIS」という。)G三一一二(鉄筋コンク
リート用棒鋼)一九八七に規定するSR二三五若しくはSD二九五Aに適合する直
径九ミリメートル以上の鋼材若しくはこれと同等以上の耐力を有する鋼材又は小径
が二十五ミリメートル以上の木材で第二第一号に規定する樹種とし、かつ、節等の
耐力上の欠点がないものとすること。
ロ だぼの長さは、相接する丸太材等に十分に水平力を伝えることのできる長さとする
こと。
ハ 張り間方向及びけた行き方向に配置するだぼの本数は、それぞれの方向につき、丸
太材等の各段ごとに、次の(1)の式によって得られる数値又は次の(2)の式に
よって得られる数値のいずれか多い数値以上としなければならない。この場合にお
いて、だぼの本数は、だぼ相互の間隔が四十五センチメートル以上のものについて
算定する。
(1)
二 イに掲げる耐力及びロに掲げる長さを有するアンカーボルト、通しボルトその他こ
れらに類するボルトについては、ハの規定によるだぼの本数の算定に当たってだぼ
とみなすことができる。
ホ 耐力壁内に設けるだぼは、建築物に作用する水平力に対して安全であるように、次
に定めるところにより釣合い良く配置しなければならない。ただし、令第八十二条
の三第二号に定める構造計算を行い、各階につき、張り間方向及びけた行方向の偏
心率が0・三以下であることを確認した場合においては、この限りでない。
(1)各階につき、建築物の張り間方向にあってはけた行方向の、けた行方向にあ
っては張り間方向の両端からそれぞれ四分の一の部分(以下「側端部分」と
いう。)について、それぞれ張り間方向又はけた行方向の耐力壁のだぼの本
数(以下「存在だぼ量」という。)及びハ(2)に定めるだぼの本数(以下
「必要だぼ量」という。)を求めること。この場合において、必要だぼ量は、
側端部分ごとに独立して計算するものとする。
(2)各側端部分のそれぞれについて、存在だぼ量を必要だぼ量で除した数値(以
下この号において「だぼ量充足率」という。)を求め、建築物の各階におけ
る張り間方向及びけた行方向双方ごとに、だぼ量充足率の小さい方をだぼ量
充足率の大きい方で除した数値((3)において「だぼ率比」という。)
を求めること。
(3)(2)のだぼ率比がいずれも0・五以上であることを確かめること。ただし、
(2)の規定により算出した側端部分のだぼ量充足率がいずれも一を超える
場合においては、この限りでない。
十三 地階の壁は、一体の鉄筋コンクリート造(二以上の部材を組み合わせたもので、部材相
互を緊結したものを含む。)としなければならない。
第五 床版
一階部分及び二階部分の構造耐力上主要な部分に丸太組構法を用いた建築物の二階部分の床版
は、次に定めるところによらなければならない。ただし、小屋裏利用二階建て建築物にあって
は、この限りでない。
一 二階部分の床材は、厚さ十二ミリメートルの構造用合板(構造用合板の日本農林規格
(昭和四十四年農林水産省告示第千三百七十一号)に規定する二級をいう)構造用パ
ネル(構造用パネルの日本農林規格(昭和六十二年農林水産省告示第三百六十号)に規
定する一級又は二級をいう。)又はこれらと同等以上の剛性及び耐力を有するものとし
なければならない。
二 床材と床ばり又は根太とは、くぎ(JIS A五五〇八(くぎ)―一九九二に規定する
N五〇に適合するものをいう。)を十五センチメートル以下の間隔で打ち付ける接合方
法又はこれと同等以上のせん断耐力を有する接合部となる接合方法により、緊結しなけ
ればならない。
第六 根太等の横架材
床根太、天井根太その他の横架材には、その中央部付近の下側に構造耐力上支障のある欠込
みをしてはならない。
第七 小屋組等
一 屋根版は、風圧力その他の外力に対して安全なものとしなければならない。
二 小屋組は、風圧力に対して安全であるように、構造耐力上主要な部分と緊結しなければならない。
第八防腐借置等
一 地面から一メートル以内の構造耐力上主要な部分(床根太及び床材を除く。)基礎の上
端から三十センチメートル以内の高さの丸太材等及び木製のだぼで常時湿潤状態となる
おそれのある部分に用いられるものには、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応
じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。
二 常時湿潤状態となるおそれのある部分の部材を緊結するための金物には、有効なさび止
めのための措置を講じなければならない。
第九 耐久性等関係規定の指定
第二第二号及び第八の規定で定める安全上必要な技術的基準を耐久性等関係規定として指定
する。
附則
昭和六十一年建設省告示第八百五十九号は、廃止する。