一般的事項
軸組工法・2×4・プレハブ・コンクリート造のいずれにしても、点検、維持、補修を欠いては、建物の寿命を著しく縮めることは間違いありません。丸太組構法でも大切なのは、工事が完成した後の維持・管理です。とくにログ材の収縮に応じたメンテナンスは、ある期間欠かすことはできません。下の表は、メンテナンスの年間スケジュールの内容を示したものです。
ログハウスの手入れカレンダー
維持・管理の内容
(セトリングに関するメンテナンスは別途)
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1年間の手入れ(屋根、塗装、設備など)の計画を立てる。 |
1月 |
寒冷地では水道管の凍結防止に注意する。 |
2月 |
雪解けによる屋根(とくに谷に注意)、雨どい(軒、堅樋)、デッキなどの清掃 |
3月 |
損傷の点検、暖房器具(ストーブ、暖炉など)の清掃。 |
4月 |
雨どい(軒、堅樋)、屋根、デッキ、コーキング箇所などの修繕を行うと共に、 白蟻の活動期に
入るので注意する。 |
5月 |
梅雨期に入る前に、排水溝や浄化そうの点検・清掃を行う。 |
6月 |
気温・湿度が高くなるので防カビに注意し、窓開けを行うなどして換気に努める。 |
7月
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屋根、外壁、デッキ、浴槽などの塗装に最適の季節。塗り替えを行う。 |
8月 |
台風に備え、屋根、雨どい(軒、堅樋)、窓、雨戸、排水溝などの点検をする。 |
9月
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草刈り、冷房機器の手入れを行う。 |
10月 |
屋根、雨どい(軒、堅樋)などに溜まった落ち葉の除去、台風による損傷点検・ 修理を行う。
とくに、堅樋の詰まりは外壁面を流れるので注意する。 |
11月 |
暖房器具の準備と建物周囲の樹木の枝伐りなどの手入れを行う。 |
12月 |
暖房に伴うログのヤニ清掃や雪害・凍害に備えた準備を行う。 |
※それぞれ建設地によって気候の違いや点検の時期が変わるので、個々の計画が必要である。
ログハウスを長持ちさせるため、次のことに注意しましょう。
①木材に水・湿気を与えないこと。コーキングなどで水を防ぐ、床下に防湿フィルムをいれ、土間コンクリート を打つなどして湿気を防ぐ、軒を深くする、雨押さえ、水切りなどにより雨水を防ぎます。露などによる水分、乾燥の繰り返しはよくありません。
②ログを乾燥させること。日に当てること、床下、小屋換気口などにより風通しを良くすることが大切です。
③ログを地面からはなすこと。基礎を高くして、高床にします。
④ログを栄養分にされないようにすること。防腐土台を使うか、防腐、防蟻剤を塗布します。また、腐りにくい樹種、ヒバ、ヒノキなどを土台に使います。
このメンテを誰が、いつ、どのように、経費負担は誰がするか、どこまで(範囲)するかなどをあらかじめ施主、施工業者、設計事務所などで明確にしておくことが非常に重要です。 定期点検は、定期点検証をつくり項目ごとの点検結果を明示し、お互いに理解しておくことが、クレーム発生時のトラブル解決策になります。また、トラブル発生の際は、素早い対処が何より大切です。 工事完成後は、お礼の挨拶状を送るか持参し、紹介者があれば、結果報告をすることも大切です。 工事完成後のメンテナンスについては、住宅金融支援機構の仕様書の中で維持・管理について次のように示しています。
①通しボルトの締め直しは、次のような目安時期を示しています。
第1回目 竣工後1か月
第2回目 竣工後3か月
第3回目 竣工後6か月
第4回目 竣工後1年
第5回目 竣工後2年
第6回目 竣工後3年
(大断面丸太材などの場合)
②丸太材などの収縮に伴う調整材の除去の時期は、ボルトを締め直す時期と同じです。
③丸太材などの収縮に伴う側板の調整は、丸太材などが収縮後調整します。
④丸太材などの防腐・防蟻処理は、ログ材などの干割れの状況を見て適宜行います。
⑤樹液のしみ出しを取り除く方法として、1.厚紙、金属板、薄板などでかき取る、2.有機溶剤をしみこませた布などで拭き取る、のふたつがあります。
⑥乾燥収縮終了後の措置について明確にするようすすめています。 乾燥収縮終了後(2~5年後)は、窓枠廻り・ドアー廻り、階段・柱下・柱頭ジャッキ・通しボルト・断熱材・塗装などを完全にチェックして止めます。 なお、ログハウスの増改築は、耐力壁の丸太収縮が終了後(新築3年後くらい)に計画することがいいでしょう。この場合、増築部分との間に開口部を新たにつくる時は、耐力壁の配置(壁のバランスを欠くと地震や台風の際に危険)や開口部上部のログ継手位置、通しボルトの位置、だぼの位置などを考えて平面プランをつくる必要があります。また、通しボルトの位置、だぼの位置などは、事前に設計書の軸組図などで位置を確認します。 住宅の保証については、ログハウスは住宅性能保証制度に加入が認められていませんが各施工会社で保証期間保証部分などを決めているので保証約款を付した明文の保証書を取り交わすこともできます。 なお、平成7年7月1日から製造物責任法が施行されます。製造物とは、製造又は加工された動産をいいます。
メンテナンス(Maintenannce)
Ⅰ建物の点検調査
経年による建物の劣化を最小限にくい止めて、安全で快適な住居環境を維持するには、日常の点検や小さな手入れ、小修繕は欠かすことができません。日常的には、清掃や手入れ及び定期的な点検が必要です。
Ⅱ基礎の異常
基礎の異常には、不同沈下によるゆがみが考えられます。ひび割れが現われることがありますが、ひび割れも2~3mm程度までは大きな問題はありません。しかし、これ以上のひび割れがある場合や、ひび割れ箇所が多い場合には、建物に対する布基礎の形状、大きさ、又はコンクリートの品質などに問題があるか、基礎地盤に問題があるとみていいでしょう。 基礎地盤による不同沈下の場合には、窓やドアーの開閉が悪くなる原因となります。基礎の改修は全面的にもちあげしてつくり直すのが理想ですが、もちあげをして補強工事を行うのは費用がかさむので、いろいろな補強工事で直す場合が多いです。
Ⅲ耐力壁などの修繕
施工状況が悪いと内壁に雨漏りすることがあります。この場合、まず原因を調査するのが大切ですが、雨降りの日にしみこみ箇所をチェックしておきログが乾燥してから、コーキングガンとマスキングテープを使ってコーキング材で隙間を埋めていきます。主なコーキング材としては、シリコン系のカートリッチ(色はいろいろある)とログハウス専用のパーマチング材があります。大きな割れや、木口割れなどには、木片や発砲スチロールのバックアップ材を使い下地をつくってからコーキングします。
ログハウスの用途は別荘が多いので、建物が樹木に覆われる場合の外壁、締め切った建物の内壁のログにカビが生える悩みがあります。カビとは、真菌と呼ばれる微生物の一種で、カビの多いところで生活すると、鼻や粘膜を多くの胞子にさらすことになり、アレルギー体質の人は、健康上放置できません。カビの予防方法としては、建物周囲の枝、草、及び、屋根上はできるだけ木の枝を払って、風通しをよくすることです。別荘の内部については、月に最低1~2回は窓を開け、空気の入れ替えをすることが大切です。
①カビが特に発生する室――別荘各室、浴室、脱衣洗面室、地下倉庫
②カビが発生する室――北側に位置する室、押し入れ、納戸、トイレ、収納庫、床下、台所、高湿度の室
木部の防カビ塗装
①防カビオイルスティン塗り(防カビ剤入り・2回塗)
②防カビスーパーワニス塗り(防カビ剤入り・2回塗)
③防カビクリヤラッカー塗り(防カビ剤入り)
④防カビポリウレタンクリヤ塗り(防カビ剤入り)
⑤防カビ調合ペイント塗り(防カビ剤入り・2回塗)
畳、カーペット、タイルなどは防カビ剤入りの洗剤を使用します。
外壁の塗装は、最近の木材保存薬剤を現場処理した場合の効力は5年程度といわれております。
山岳など風雨の厳しい場所や海岸近くの潮風の当たる場所では、3年ぐらいに一度は塗り替えをしたいものです。
内陸の普通地域でも、5~6年に一度は必要です。
白蟻は、木材を食い尽くす害虫として知られていますが、建物被害は腐朽と虫害の両方があるので、ログハウスの耐久性を本当に向上させるには、防腐と防蟻対策を必ず合わせて行うことが大切です。
木材保存剤には、表面処理用のものが各メーカーから販売されており、専門店、DIYなどに行けば手軽に買えます。
保存剤には、防腐、防虫、防蟻、土壌処理用などいろいろあるので、規格・適応をよく確かめて購入しましょう。
塗装方法には、はけ塗り、吹き付け塗り、ローラーブラシ塗りなどがありますが、丸ログなどは、はけ塗りが一般的でしょう。胸より高い位置では脚立などを利用しますが、小バケツ(DIYなどで販売している)も便利です。
Ⅳ屋根、雨樋のメンテナンス
屋根の施工とメンテナンスの良否は、建物の寿命を左右する重要な要素です。屋根材は、風雨や雪(時には氷)、温度変化などの影響を直接受けるので、過酷な条件に耐えうる材質が必要です。屋根材のもつ特性を最大限に生かすためにも、メンテナンスが大切となります。ログハウスには急勾配の屋根が多いので、点検や修繕は安全に注意して行いましょう。
瓦葺きの場合は、瓦のずれ直し、破損瓦の差し替え、煉瓦の取り直しなどの補修が必要です。
金属屋根の場合は、経年により表面塗装の塗膜の劣化、はがれ、錆びの発生が出るので、定期的に塗り替える必要があります。その際塗料の選定は、被塗物の種類、状況、環境条件などを考えるとともに、塗る素地面の調整がポイントとなります。カラーベストなどの石綿板でも10年ぐらい経つと表面が劣化して水分を吸いこみ、カビ、コケなどが生えてきます。このような場合は、表面をほうきやブラシなどで清掃し、水性プライマーを塗り乾燥後、石綿スレート用(水性屋根用)塗料をローラーやハケを使って塗ります。施工は、気候条件にとくに注意して行います。 鉄板の場合には、錆びが出る直前に塗るのが良いのですが、錆びが出た場合には、清掃錆び落としを行ってから錆び止め塗装を行います。ログハウスの場合は、急勾配の屋根が多いので、足場を組む場合が多く危険が伴います。その時は、専門家にお願いするのがベターです。 また、窓廻りや土台廻りなどの水切り鉄板などは平均耐用年数が7年くらい、コーキングは10~15年、雨樋はカラー鉄板製が15年、塩化ビニール製が10年くらいといわれています。とくに、堅樋が木の葉や枯れ枝で詰まり雨水がログ壁面を流れた場合などは、耐力壁やログエンドを腐らせたり、雨水が室内にしみこむ原因にもなるので十分注意が必要です。軒樋が雪で押されたり、詰まって流れないなどで、途中から流れ落ち、デッキの上や手摺の上、地上からの跳ね返りでログに繰り返しかかると著しく建物を腐らせることがあります。この場合は、早急な修繕が重要です。
Ⅴ水廻りのメンテナンス
水廻りの中で最も湿害に浸されやすいのが浴室・洗面所です。土台部分から上をログ積みむき出し仕上げとした場合は、とくにメンテナンスに注意をはらう必要があります。このような浴室・洗面所は定期的に防腐・防蟻塗装の他に木材用の防水材塗装を行うのがいいでしょう。浴室は湿度が高いため、すぐにカビが発生し、カビだらけになります。 浴槽を木製とした場合は、まめに手入れをする必要があります。 また、屋外や軒下などにある外流しや散水栓、ガス湯沸し器まわりなど、給水管が露出しているところは、寒冷地では凍結して水が出なくなったり、時には水道管が破裂し土を流し、基礎にまで影響することもあるので、凍結防止帯(電熱を使ったもの)や保温材(グラスウールなど)を巻き、保温対策を行います。寒冷地の別荘などで、不凍結水栓が設置されている地域では、水抜きの方法が違いますので注意が必要です。
Ⅵデッキ廻りのメンテナンス
ログハウスにはデッキはつきものとなっていますが、屋根や庇がない場合が多く、雨が降ったり、夜露が降りてぬれることが非常によくあります。この繰り返しは、ログや木材を早く腐らせます。
デッキに使用する木材は、加圧注入処理(十分侵潤処理した場合は効力持続時間20年)をするか、耐朽性の大きな材料であるヒノキ、ベイヒバなどを使用します。または、防腐塗装を3年くらいをめどに、状況を見ながらメンテナンスを行う必要があります。