日本では、ログハウスは古くて新しい工法である。日本は昔から「木の文化」の国だと言われている。
建築物では、古くは奈良東大寺正倉院の大倉庫校倉造りが有名ですが、校倉は倉庫建築の一形式で束玉石基礎の上に柱を建て床を高く張り6角形断面の木材を井桁に組み合わせながら積み上げて壁体としたものである。断面形状の大きさは、建物の大きさなどによりそれぞれ異っている。
これに対し、「石の文化」の国が多い中央ヨ-ロッパでも「木の文化」である木造の建築が古くからの植生分布の中から木壁組積造として古くから造られていた。戦後の昭和30年代に入って、日本にカナダ・アメリカ・フインランド等からログハウスはキット加工され輸入されはじめた。
当時輸入には、建築基準法施行令の木造規定(第3章第3節木造)に合致しない特殊な構造方法の建物として建設大臣の認定が必要で手数と多くの時間がかかった。
こうした状況ではあったが、30社以上の先進的な企業団体等が大臣認定(38条認定)を取得して、別荘、コテ-ジ等の用途を中心に建築実績を伸ばし約200棟~300棟の建築を積み重ねて行った。一方、国内でも林産関係団体等が丸太組構法の技術開発に力を入れるグル-プもでてきて、次第に技術的ノウハウやデ-タを蓄積していった。
また、わが国の貿易収支の当時の大幅黒字等を背景に、諸外国から市場開放の要求も強まっていた。このような状況に対処するために、政府は昭和60年7月市場開放のための行動計画アクションプログラムの骨格を決定した。建設省には、木造建築技術専門委員会を設置しログハウスの設計基準の検討が行われ、昭和61年3月(1986年)には、「丸太組構法の技術基準告示」(昭和61年3月29日建設省告示第859号)が制定された。 その後、告示の適用範囲の拡大と基準の内容の合理化を図る改正が行われた。業界は、基準告示施行に前後して、38条認定取得者を中心に発足した「日本ログハウス協会」と国産材の利用開発を中心とした「全国ログハウス振興協会」の2つが設立されそれぞれ事業を行ってきた。最近に至り共通事案は互いに協力して活動してきた事情もあり、更に建築基準法の改正もあり、近く新告示が制定される見通しもあったことや指導官庁の国土交通省・林野庁両省庁の理解の基に平成14年10月に懸案の合併をして新たに「ログハウス協会」が任意団体として設立された。現在は、会員170社を越える業界唯一の団体となり活動の輪も大きくなっている。
協会は、一年に1回6月に総会を開く。その総会の下に理事会があり、理事会を年に4~5回開催しその年の事業計画に基づき事業を計画して行く。実際の実行は技術、組織拡大、調査情報、普及広報の4つの委員会が行う。会員は、誰でも委員会の委員になれ活動できる。更に、全国を7つの地区に分けた支部があり、各地区の要となっている。
告示制定当時の建築棟数は、700棟~800棟程度であったが、校倉の壁体での校木の収縮が一番やっかいな問題で、「気密性」や「雨仕舞」の困難さが指摘されました。木材の収縮は、繊維方向よりも繊維方向と直角な方向、すなわち校木の軸方向よりも断面方向に含水率が高いほど収縮がおこる。 協会では、その後、木材の乾燥方法やログハウスの水密性試験を繰り返すなど改良に努め気密性の向上を図った。ログハウスの腐朽対策でも過去の建築現地調査を行い雨足の跳ね返り高さや、巾により基礎の高さを考える設計を行ってきている。その後、ログ材(校木)の収縮を止めるため木材の含水率を人工乾燥により下げる研究開発が会員各社で進められた。この時期、在来軸組工法でもエンジニアリングウッ
ドの流れがあり、工業化木材が求められていた。軸組工法のムク柱材が建築完成後収縮してオ-ナ-と寸法トラブルがでたり、乾燥による割れが発生しユ-ザ-に嫌われた。
更に「消費者契約法」の制定もあり乾燥収縮のない集成材の柱が最近は、主流となっているが、ログ材でもフインランド製品で集成材(ラミダ-)ログが輸入されるなど、急速に木材の乾燥収縮対策が進められた。
また、一方機械プレカットにより重なり部分の本実加工や交差部の加工精度が上がったことや交差部や重なり部にシ-ル材を入れる工法が開発され、防火ログハウスの開発や居住性についても格段に精度が向上した。
国土交通省住宅局木造住宅振興室調べの建築確認統計(別表)では、2000年度には945棟の確認申請が出され過去最高となった。全国の建築着工棟数は、ログハウスには、「工事届」の中にジャンルがないため確実な数が掴めないが、建築確認統計の3倍以上はあると推定され3000棟以上あると想定されている。その用途は、住宅、別荘(セカンドハウス)を始め、宿泊施設(コテ-ジ・キャビン・バンガロ-)、店舗、事務所、公園施設、バスストップ、販売所等とほとんどの用途に及んでいる。用途は、最初の別荘中心から市街地の住宅へと変わってきている。
今後の課題として、更に市街地や防火地域に大きく用途・建設戸数を伸ばして行けるかが残されている。防火ログハウスは、「防火性能外壁」(土塗壁同等20分耐火)・「防火構造」(30分耐火)・「準耐火構造ログハウス」(45分耐火)がある。防火ログハウスの開発は、「防火性能外壁」については、財団法人日本住宅・木材技術センタ-の開発事業努力により7年がかりで協会指導申請の認定が80社認定された。その外に、個人申請認定が5社ある。「防火構造」ログハウスは、林野庁の補助事業の成果を生かして、24社が今年5月に国土交通大臣認定を取得している。防火ログハウスの取得希望者は、その後も多く事務局に問い合わせが多くきている。協会では、更に、「準耐火構造ログハウス」の大臣認定を目標に林野庁補助事業として、実用化試験をこの程実施した。内容は、国産スギ材ログの4タイプ①丸型台形1本実ログシ-ル材入り、②角型2本実集成材(5枚ラミネ-ト)ログシ-ル材なし、③楕円型2本実ログシ-ル入り、④角型2本実ログシ-ル入りの壁(約3m×3m交差部付)の45分耐火を確認するもので試験をつくば市にあるBL建築試験センタ-で行った。これは、準防火地域での住宅はもちろん公共建築物を目ざしたもので、今後、試験結果が50%の成功率であったことなどを分析して会員の意見を尊重しながら実用化を更に目ざすこととしている。
また、注目しているのは、平成14年7月14日の国会で建築基準法改正で、「居室における化学物質の発散に対する衛生上の措置」が通過したことがある。内容は、[第28条の2・居室を有する建築物は、その居室内において政令で定める化学物質の発散による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。]とあり、7月29日にはシックハウス対策の技術的基準の試案が国土交通省から出されている。これは、建材に含まれるホルムアルデヒドを主とした有害物質が使われた建材が住宅に使われ、人間を病気にしていることがあるらしい事実が、少しずつ明らかになり、政府が今国会に法案を提出していた。有力新聞の調査では、医者によるこの病気診断が非常に難しい状況にあるが、全国にはシックハウスと思われる患者は、500万人以上いると報じている。日本での室内のホルムアルデヒドの指針値は、0.08ppm以下とされている。今まで、行政を始め関係団体試験研究機関が空気環境の実態調査を実施して来ており、木質建材関係についても、実大の実験棟を作る等して現在建設されている住宅に使用されている建築材料を使用しての調査を行った。財団法人日本住宅・木材技術センタ-でも構造別に現在調査を実施していると聞いている。国土交通省でも2000年に全国で実態調査をしたが、ホルムアルデヒドの濃度指針値を越える住宅は、27.3%もあったと言われている。各材料のホルムアルデヒドの放散は、パ-チクルボ-ド、合板木質フロ-リング、普通合板、構造用合板、壁クロス、石膏ボ-ド等ほとんどの建材からホルムアルデヒドを含むVOC(揮発性有機化合物)が放散されている。化粧に使うヘア-スプレイ等にも含まれているというから怖い。
ただ、ログハウスのログ材は、むく材だから大丈夫とも言えず、むく材でもホルムアルデヒドは0ではないと言う。むく建材については今後更に検討が必要である。この法律をきっかけに、リフオ-ムを行う人が増え安全な建材捜しや、居室を長期的に健康を守るため空気環境の換気方法の研究も進められると思われる。
また、一方、ログハウス業界にとって重要課題は、平成14年5月15日に出された告示第411号である。昭和61年3月(1986年)「丸太組構法の技術基準告示」(昭和61年3月29日建設省告示第859号)以来16年ぶりの大改正で、大幅に規制範囲が緩和された。
現在、日本建築センタ-に事務局が設けられ、告示の「解説書」作成のための検討委員会(委員長坂本功東京大学工学部教授)が発足し、本年末までに解りやすい「基準解説書」ができるよう委員会等が急ピッチで進められている。
内容は、今までの基準では階数は2以下(小屋裏利用)延べ面積300㎡以下、高さ8,5m以下など、厳しい規制枠があった。
これが今回の改正で緩和され①木造混構造2階建(1階ログハウス2階枠組工法・軸組工法)②RC(S)混構造3階建(小屋裏利用)③丸太組構法2階建④木造平面混構造2階建(1階丸太組構法)が可能となり、面積制限は、延べ面積≧3,000㎡、高さ制限も高さ≦13mと木造建築物と同じになった。構造計算によって安全性を確かめなければならないのは、延べ面積300㎡以上(木造500㎡以上)高さ8.5以上(木造13m・軒高9m以上)地階を除く階数2以上とされている。
材料では、丸太材等の樹種は、枠組壁工法構造用製材の日本農林規格又は構造用集成材の日本農林規格の表に定める樹種とされており、今まで日本でのログハウスに使われてきたスギ・ヒノキ・カラマツ・アカマツ・ダグラスフアー・ベイヒ・ベイツガ・ヨ-ロッパパイン・ホワイトパイン(ストロ-ブマツ)等が使用できる。しかし、2階部分に丸太組構法を用いた耐力壁の木材の含水率が20%以下と規制された。なお、小屋裏利用ログハウスは除外されている。今後、木材の含水率20%以下にするため人工乾燥が必須条件となってくる。2階建のログハウスの場合は、構造計算によるが、ログ材の断面積が150cm2以上、かつ、ログ上下の接する部分の巾は9㎝以上となっている。ログ材の断面積は、改正前は120cm2以上1,400?以下とされていたのが、改正で最低が105cm2以上と小規模ログハウスや国産間伐材等の利用がコストを含め建築しやすくなった。告示の解説については、現在、審議の真最中であり、内容のコメントはさしひかえたい。
協会では、「基準解説書」が完成した後は、協会でも講習会・研修会の開催を行うほか現在の「ログハウス設計・施工マニュアル」を改訂して、解りやすい施工解説書を発行する予定である。
ログハウスには、以上のほかにも課題がまだ幾つか残っている。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」がある。
①ログハウスの住宅性能表示制度について、ログハウスの「構造の安定」等級2以上のチェック方法等の明確化 ②ログハウスの瑕疵担保責任10年義務づけについて、昨年から「特記仕様書」を住宅保証機構の承認を頂きスタ-トさせているが、今回の大幅な新告示改正による仕様を、住宅金融支援機構の仕様書改正と合わせ、連絡調整を行いながら新しく「特記仕様書」を作成し直さなくてはならない。同時に「現場チェックシ-ト」の作成も急ぐ必要がある。
最後に「木の文化」の国である日本では、ログハウスはこれからの研究開発や工夫努力により、いろいろな用途の建築物や需要もまだまだ伸びる要素があると思う。築200年~300年のログハウス建築をヨ-ロッパで見て、日本でも「劣化の軽減」等級4のログハウスを夢見て。